第1章:裁判所、非行少年、そして「人生の転機」

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森さんは先生をする前は、裁判所で働いていらしたんですよね?

そうなんです。もともとは教職を考えて文学部にいたんですが、当時はバブル崩壊の直後。安定して働くには公務員になるしかない、という時代だったのもあって、公務員の試験を受けて、裁判所の事務官になりました。

裁判所ではどんなことをされていたんですか?

家庭裁判所で、非行少年の調査などに関わっていました。そこで、ある窃盗や暴行を起こしてしまった少年に出会ったんです。少年と面会をしたときに、彼は親からも学校からも拒絶されて、 どこにも「居場所」がなかったと言う話を聞きました。彼が少年院を退院して学校に戻ろうと思ったところ、担任の先生から「お前が来るとみんな怖がるからもう学校に来ないでほしい」という言葉を発せられたと言っていました。

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…胸が締め付けられますね。

その話を聞いて、犯罪を起こす少年が、自分の居場所が見つけられなくて 闇の世界に入ってしまう原因は、普段生活する家庭や学校が作っているのだと感じました。そして、法で裁く以前に、彼らには教育や受け皿が必要なんじゃないか。そう痛感したことが、大きな転機になりました。

それで教師の道へ?

はい。ちょうどその時、母校である法政高校の教員募集を見つけたんですが、年齢制限が自分の年齢ぴったりで。あと1年遅かったら受けられなかったんです。運命を感じて試験を受け、合格して最初に担任を持ったクラスには……なんと、ドレッドヘアの生徒がいました(笑)。

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